なんらかの事情で年度途中の半端な時期に退職せざるを得なくなることがある。そのような場合、退職日をいつにするか会社との相談で決めることがある。給料計算の便宜から給料の締め切り日とか切りのいい月末とかに決める例が多い。
退職した労働者から次のような相談があった。
退職の手続きの話しの中で、最後の月分の社会保険料(厚生年金、健康保険)の従業員負担分(天引き)の負担を避けるためという理由から、退職日(離職日)を月末の前日とすることを会社の庶務担当者から勧められた。相談者は一旦は了承したが、後になって厚生年金の被保険者期間が1か月分少なくなり、将来受ける年金額がその分少なくなることに気づいた。どうにかならないかという相談であった。
社会保険(健康保険、厚生年金)は労働保険(労災保険、雇用保険)とは異なり、月単位の加入となる。具体的には、当該月を被保険者期間としてカウントするか否かは、当該月の末日に被保険者資格を有しているか否かを基準に判断する。
保険料の負担は会社と従業員の折半で、従業員負担分を含め会社が毎月、保険者に納付することになる。くだんの会社はこの保険料の会社負担分を節約する目的で、退職予定の従業員に従業員負担分(通常は給料から天引きされている)の節約になるからと親切ごかしに月末日に被保険者資格を喪失することになる月末日前日退職を勧めたわけである。
この節約は会社については経済合理性はあるが、従業員にはない。そもそも、国民皆保険の原則に基づき、失業期間中も国民健康保険や国民年金に加入する必要がある。一日の隙間なしにである。月末日一日だけの加入でも1か月分の保険料を納める必要がある。しかも、健康保険・厚生年金の保険料は会社が半分負担するが、国民健康保険・国民年金の保険料は全額被保険者が負担することになる。
不自然な月末前日退職の提案は要注意です。ちなみに、上記相談については、会社に対して年金事務所に離職日の訂正の手続をするように求めた結果、会社が月末前日退職を月末退職に訂正する手続をとることで解決に至った。(直井)
世の中変なことがある。
次のような相談を受けた。
勤めていた都内の美容院を3年以上前に辞めたにも関わらず、オーナーが相談者が勤め続けているように装い、税務署等に報告していたというのだ。
本人はそのこととに気づかず2年以上経過した後、たまたま友人との雑談のなかで無職の自分の国民健康保険料が定職についている友人より高いのに気づいた。
区役所に問い合わせたところ、区役所に提出されたオーナーからの給与支払報告書では、相談者は雇用され続けていたことになっているとの驚きの回答があった。
オーナーは人件費などの経費を水増しして所得税の申告していたと思われる。
相談者は払い過ぎた国保料(及び住民税)の返還を区役所に求めたが、この間働いていなかったことの証明がなければ、対応できないとの回答であった。
税務署にも相談したが、埒があかなかった。
相談者はオーナーのセクハラ・パワハラのため逃げるように美容院を辞めた経緯からオーナーとの接触をおそれていた。
辞めたこと及びこの間働いていなかったことの証明は意外と難しく困り果てた。
相談を受けた「ほっとユニオン」がオーナーに事案解明と問題解決のための団体交渉を申し入れたところ、意外なほどあっさりとオーナーは事実関係を認め、解決に向けて動き出した。
マイナンバー制度の施行により給与支払報告書や源泉徴収票などに従業員のマイナンバーを記載する必要が生じたことから、相談者のマイナンバーを知りようもないオーナーは対応に困っていたようだ。
一般には不人気なマイナンバーの意外な効用といえる。 (直井)