庶務業務担当の契約社員として更新を重ね6年間近く勤務を継続してきたが、現在の契約の期間満了日の1か月ほど前に勤務成績不良を理由として次回は更新はしない旨口頭による通知があったとの相談があった。
相談内容は更新拒否の理由に納得できないということとともに、今からでも無期転換の申し込みはできないかというものであった。
労働契約法18条は、有期労働契約の契約期間が通算して5年を超える場合、労働者に無期契約への転換の申込権が発生すると定める。
申込の時期については、「現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に」と定めるのみで特に制限を定める規定はない。
したがって、会社から更新拒否を通知された後であっても、契約期間の満了日までは無期転換の申し込みはできる。
また、常に更新がなされるかどうか不安定な状況に置かれている有期雇用労働者の地位の保護という労働者18条の趣旨から、無期転換申込権の事前の放棄の合意は公序違反(民法90条)と評価され無効となる。
もっとも、無期転換権が発生した後に労働者はそれを放棄することは、労働者の自由な意思に基づいているものであれば、必ずしも公序違反と評価されるものではない。
本件は、相談者が無期転換申込権を放棄したと認められる特段の事実も認められないことから、契約期間満了日前までに文書による無期転換の申込をしたうえで、更新拒否ないし不当解雇を争うことをアドバイスした。(直井)