蔓延する違法残業の規制のため、慢性的な人員不足状態にある労働基準監督官の業務の一部を社会保険労務士に委託する案が持ち上がったとき、社労士にそのような役割は期待できないとの声がでた。
「社会保険労務士」=「経営者側」という固定観念があるからです。
この固定観念には理由があります。
大部分の社労士は企業の顧問社労士として企業からの収入で生計を立てているからです。
専ら企業からの収入に頼って生活している社労士に企業を監視する機能は期待できないという理由です。
社労士は企業の方に顔を向けて仕事をしているというのが労働者の一般的な認識です。
「社員を鬱に罹患させる方法」をいう記事をブログで公表し厚生労働大臣から処分された社労士は極端な典型例といえます。
労働相談カフェは労働者支援のためのネットワークとしてユニオン、弁護士、社労士の活動を有機的に結びつける拠点作りを目指しています。
労働相談カフェに所属する社労士は労働者支援の立場から社労士活動をしています。
しかし、正直に言えば、労働者側の仕事だけでは財政的な基盤を確立できず、ボランティア的な活動手法を脱しきれていないのが現状です。
継続的に活動を維持するためにはその活動自体から安定した収入を確保する必要があります。
労働者を支援したいという気持ちだけで続けることには限界があります。
労働相談カフェではカフェでの対面相談の際に1000円の相談料を徴収しています。
真摯な相談に真摯に対応するという覚悟を表すともに、どんなに社会的に意義の活動でも無料では維持できないということをアピールする意味もあります。(直井)
「労働者の味方」との宣伝文句は不適切な情報発信にあたると社労士会は全国の社労士に対し指導している。
ブログ上で「社員をうつ病に罹患させる方法」という刺激的なタイトルで自己アピールした「会社の味方」の社労士が社会問題化したことに対する対応である。
社労士会は、指針において不適切な情報発信の事例(公正さを疑わしめる事例)として「100%会社側」とともに「労働者の味方」をあげている。
中立的な立場から労使公平に取り扱うということなのだろう。
でも何だか変だと感じるのは私だけではないだろう。
現代社会において会社と労働者の力関係には明らかな差がある。
厳として存在する格差を無視して形式的に平等を取り繕う安易な姿勢に嗤ってしまう。
私は労働組合ほっとユニオンの代表をしているが、社労士としても開業登録している。
社労士として実際に行っている業務はあっせん代理など紛争解決手続代理業務と相談業務だけであるが、いずれも労働者側支援の立場から行っている。
これからも胸を張って「労働者の味方」の社労士として情報発信をしていく所存である。(直井)