2021/11/03
そもそも、試用期間の延長は、就業規則などで延長の可能性およびその事由、期間などが明定されていないかぎり、試用労働者の利益のために原則として認められない。
解約権留保付き労働契約と解される通常の試用関係においては、解約権が行使されないまま試用期間が経過すれば、労働関係は留保解約権なしの通常の労働関係に移行するのが原則であるからである。
さらに試用期間の延長が退職勧奨とセットで提示されたことは、会社が留保された解約権を行使した場合に解雇事案として法的に争われるリスクを回避する目的で、労働者の自主的な退職をうながすための手段として試用期間の延長が持ち出されたことが窺われる。
2021/05/29
どんなに退職届(願い)への署名を迫られても、「持ち帰って家族と相談をしたい」とその場での署名を避けたうえで、早急に専門家へ相談をというのが退職勧奨にかかる労働相談が勧めるセオリーである。
そこには一旦署名をしたら終わりだという前提があるようだ。
でもその前提は正しいのだろうか。
対等な市民間の契約関係を規定する民法の規定によれば、自由な意思によらない意思表示は取消すことができる(民法95条、民法96条)。
労働契約関係においても同様である。
否、使用者との関係で経済的弱者である労働者保護の立場から一般的な契約関係以上に労働者の自由意志は尊重されなければならない。
2020/05/23
コロナ禍による業績不振を理由として、①賃金の大幅な減額を伴う本社管理部門から店舗のスタッフへの異動を提示され、それが嫌なら、②自己都合退職してもらう、どちらかを選択して欲しいと社長からいわれた。
どう対応すれば良いのか、との相談があった。
会社から、①労働条件の不利益変更を受け入れるか、さもなくば、②自主退職か、との二者択一を迫られたとの相談は少なくない。
2020/03/28
少しでも嫌がらせをやめさせることができないかとの相談があった。
相談者が弁護士に相談したところ、法に触れないように慎重に考えた上での意図的な組織ぐるみの嫌がらせと考えられること。
悪質ではあるが、法的な対応は難しいとのことであった。
そこでユニオンの団結の力で多少なりとも会社を牽制できないかと期待しての相談であった。
しかし、社内に何の足場のない社外の組織であるユニオンにはそのようなお手伝いは難しい。
また、不当解雇などの個別的労働紛争を主に取り扱う小規模なユニオンは、会社との交渉において、労基法、労働契約法など労働法規を交渉の武器として会社の違法不当な行為を攻撃するのを常とする。
不当ではあるが違法とまではいえない社内の陰湿な嫌がらせ退治についての団体交渉は困難だ。
2019/12/08
このままだと解雇となる、解雇されると転職に不利となる、会社はあなたのことを考えて自主退職を勧めているのだ、と人事担当者から勧奨退職に応ずるように執拗な説得を受けているとの相談があった。
会社が何らかの理由で辞めて欲しいと考えている従業員に対し、いきなりの解雇の言い渡しを避けて、退職勧奨を実施することはままある。
解雇をちらつかせての納得できない退職勧奨には、解雇を恐れず明確に断ることをお薦めします。
2017/10/28
使用者は争いを残さないために、または、ハローワークの助成金を申請しているなどの理由から、辞めてもらいたい従業員に対して、明確な解雇を言い渡さないで、暗に退職を促すことがある。解雇されるとあなたの経歴に傷がつく、自主退職のほうが転職するのに有利だなどと親切ごがしに言ったりする。
退職を勧奨された労働者は辞めることには異議はなくても自主退職を拒否することがある。
自主退職(自己都合退職)は失業給付の請求などで不利益を受ける場合があるというネット情報の広がりのためである。
望んでいない自主退職を断固拒否することは賛成である。
明確に解雇を言い渡されるまで断固出勤しつづけるという選択である。
2017/03/31
一旦同意した退職の効力を裁判で争う場合、外形は同意したように見えても真意は違うとか、同意が強制されたものだとか、騙されて同意したものであるとか、同意の法的効果を否定する理由を労働者の側で積極的に主張、立証する必要があります。正直に言って、これがなかなか困難です。
いきなり会議室に呼ばれ、複数の上司に囲まれて退職を迫られるとパニックになってしまいがちですが、家族と相談してから明日返事をするなど言い繕ってどんなことがあっても即答は避けなければなりません。
曖昧に任意の退職を求めてくる使用者には、書面で明確な解雇の意思表示をすることを求め、解雇理由証明書を要求することも大切です。