本年4月1日に正社員の保育士として保育園に入職したが、人手不足による業務多忙のため体調を崩したことから、9月末日をもって退職した。
退職に伴い社宅を明け渡す際、園から自己負担なしで提供されていた借り上げ社宅の家賃6か月分(42万円)の支払いを求められたとの相談があった。
園は、1年未満で退職したことが遡って家賃6か月分を請求した理由だという。
また、園は、入職時に相談者にその旨説明したというが、相談者にはそのような説明を受けた覚えはない。
しかしながら、かりに1年未満で退職した場合には遡って借り上げ社宅の家賃を支払うとの約束が交わされていたとしても、そもそも、その約束は労働基準法に違反する疑いがある。
労基法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定する。
労働契約において、契約期間の途中で退職した場合の違約金や損害賠償の予定の定めがあると、労働者はその意に反して雇用契約の継続を強制されることになるので、これを禁止し、労働者の退職の自由を確保する趣旨である。
借り上げ社宅を無償で提供しながら、入社後1年未満で退職した場合は遡って社宅の賃料相当分を請求するという契約は、労働者の退職の自由を確保するという、労基法16条の趣旨に反する違法な契約と言わざるを得ない。(直井)
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