不当解雇についての相談は多い。
解雇は違法・不当で納得ができない、しかし、いまさら職場に戻るつもりはないという相談者は少なくない。
復職ではなく、損害賠償(慰謝料)を請求したいという相談である。
法律的にいえば、労働契約法16条(解雇)を根拠に解雇の無効を主張して従業員としての地位の確認(復職)を求めるのではなく、民法709条(不法行為)を根拠に解雇が違法な権利侵害である不法行為に当たるとして損害賠償(慰謝料)を請求したいということである。
しかし、復職までは求めないという相談者に対しても、とりあえずは、解雇無効を主張して従業員としての地位の確認(復職)を求めることを勧めている。
結局、金銭解決で終わるとしても、このほうが労働者に有利だからである。
裁判所において、解雇が不法行為に当たると主張し損害賠償(慰謝料)を請求する場合、原告(労働者)が解雇が不法行為に当たることを証拠に基づいて証明する必要がある。
労働者が十分な証拠を持っていない場合は勝訴は事実上困難な場合もある。
一方、解雇無効を主張する場合、解雇に客観的に合理な理由があること、かつ、社会通念上相当であることについて、立証責任を負うのは使用者である(労働契約法16条)。
労働者は解雇された事実だけを主張・立証すれば足りる。
裁判手続において客観的な証拠が十分でない場合、立証責任をどちらが負うかは、決定的な違いとなる。
事実を証拠に基づいて証明できない場合、立証責任を負う側が敗訴することになる。
当然、このことは裁判外での交渉にも影響を与える。
裁判外の交渉においても、交渉が決裂して裁判手続に移行した場合どうなるかを、使用者も頭に入れて交渉に応じるからだ。
すなわち、復職ではなく金銭解決を求めるにしても、とりあえず解雇無効を主張して復職を求めるほうが、使用者に与えるプレッシャーはより大きいものとなる。
また、交渉により得られる金銭解決の水準も結果として高いものとなる。(直井)
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