傷病手当金の使用者証明欄を使用者が書いてくれない、離職票の交付手続をしてくれないなど使用者が法律で定める義務を履行してくれない、どのようにすれば使用者に強制できるのかという相談は相変わらず多い。
それぞれ健康保険法、雇用保険法が定める手続であり、使用者には法的義務がある。
しかし、労働者には使用者に義務の履行を強制する端的な手段がない。
手続自体の履行を使用者に求めることが労働者の権利として保障されていないからだ。
使用者は行政に対して履行義務を負うという仕組みだ。
したがって、そのような相談を受けた場合、まずは、ハローワークや保険者(協会けんぽなど)に対し、使用者が法に従って義務を履行するように指導することを求める、アドバイスをすることにしている。
それで使用者が行政の指導に応ずればことは解決するが、実際にはなんやかんやと理由をあげて、応じない使用者も少なくない。
離職票の不交付の場合は、手間はかかるが、労働者がハローワークに直接、離職の事実の確認請求をして、ハローワークの職権調査により、使用者を介さないでハローワークから直接離職票の交付を受けるという手続がある。
しかし、傷病手当金にはそのような手続はないので労働者としてはお手上げ状態になってしまう。
そのようなときは、使用者が記載を拒否した経緯を記載したメモを添えて、使用者証明欄は白紙のまま、保険者(協会けんぽなど)へ申請書一式を郵送しすることをアドバイスしている。
保険者の職権による調査を期待してのことである。
日本において労働法ほど守られていない法律はないといわれることがある。
罰則の適用がないからと高を括り、法を平気で破る使用者の横行を許せば、労働の現場は強者である使用者のやりたい放題の無法状態に陥ってしまう。
行政には法的な義務を無視する使用者に対しては職権で調査をするなど厳格な対応で望むことを期待したい。
経済的弱者である労働者を経済的強者である使用者の横暴から守るのが行政の役割であるはずだ。(直井)
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