☆雇調金検討なしの整理解雇はコロナ便乗解雇!☆

東京都においては新型コロナの新規感染者が100人を超える状態にあり先行きに依然不安がある。

他方、緊急事態宣言の解除後、自粛要請が緩和されたことに伴い、事業活動が再開されるなど日常が戻りつつある。

休業状態だった企業活動は再開されたが、コロナ禍による業績悪化を理由に休業からの復職を拒否されそのまま整理解雇を言い渡されたとの相談があった。

 

雇用調整助成金は、休業手当を支払って雇用を維持している企業に対する助成金である。

新型コロナ特例の助成措置は数度の改正を経て手厚くなり、中小企業であれば、助成率は100%(上限1人1日1万5千円)である。

したがって、雇用調整助成金を利用すれば少なくとも助成対象期間(4月1日から9月30日)の人件費の負担は避けられることになる。

 

このような状況下において雇用調整助成金の利用を検討しないまま言い渡された整理解雇の有効性には疑問がある。

整理解雇の有効性の判断基準としての4要件(①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③人選の合理性、④労働組合(ないし従業員)への説明)がある。

雇用調整助成金の利用を検討しないでなされた整理解雇は、②解雇回避努力義務の履行を満たしていないと考えられる。

 

雇用調整助成金は不況下における企業の解雇を避け雇用維持を目的とする助成金である。

解雇回避努力義務の履行のひとつとして、雇用調整助成金の活用は当然検討されるべきである。

従前の雇用調整助成金は人事制度の整った大企業向きの制度であったが、コロナ特例の雇用調整助成金は、数度の改正の結果、中小企業に非常に手厚いものとなり、また利用しやすいように工夫されきた。

 

雇用調整助成金の利用を検討もしないでなされた整理解雇は労働契約法16条(「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効である。」)の規定により無効と解される。

コロナ禍のなか安易に整理解雇を実施することはコロナ便乗解雇であり許されない。(直井)