☆講師の個人事業主扱いの見直し☆

楽器大手ヤマハの子会社が展開する「ヤマハ英語教室」の講師でつくるヤマハ英語講師ユニオンは、会社側が、個人事業主扱いにしていた講師との委任契約を見直し、直接雇用する方針を組合に提示したと発表した(20年6月8日「読売新聞オンライン」ほか)。

 

勤務場所や勤務時間、仕事の進め方などについて会社に管理され、働き方の裁量がほとんどない労働者が業務委託契約・委任契約など労働契約以外の契約を締結して個人事業主として労務を提供とする働き方がある。

「名ばかり事業主」である。

働き方の多様化という喧伝の下、学習塾の講師や配達員など様々な職業で「名ばかり事業主」が増えている。

 

コンビニ店長などの「名ばかり管理職」は、残業代の支払い義務を免れる目的で企業により多様されたものだった。

「名ばかり事業主」も同様に労働法規の保護規定を免れる目的で企業により使われている。

労基法上の残業代はもとより、社会保険、労働保険の保険料の支払い義務を免れるメリットが使用者にある。

 

そもそも、労働者概念の基本である労働基準法上の労働者にあたるか否かは、契約の形式ではなく、労務提供の実態で判断されるものである。

使用者の指揮命令下で労務を提供しているか否かが判断基準となる。

しかし、裁判所の判断を仰ぐためには時間とお金がかかるため労働者個人で争うことは事実上困難だ。

 

本件の特徴は、委任契約という働き方の形式に疑問をもった講師が仲間を集め労働組合を結成して直接雇用化を求めての1年にわたる交渉の結果であることにある。

コロナ騒ぎは仲間を増やす追い風となった。

コロナ騒ぎのなかでさまざまな救済措置からもれ落ちる働き手がある。

 

労基法の定める休業手当はもらえず、さりとて税法上は給与所得者として扱われているため個人事業主を対象とする持続化給付金の対象ともならない。

コロナ禍は制度の谷間にある無権利な働き方を顕在化させた。

このことがより多くの仲間を集めることになり、結果として会社の譲歩を引き出したといえる。(n)