☆小学校休業等対応助成金の制度設計ミス☆

新型コロナ対策として創設された制度の一つとして、臨時休業した小学校、保育園などに通う子供を世話するために、従業員に有給の特別休暇を取得させた会社に対し、特別休暇中に支払った賃金を助成する小学校休業等対応助成金制度がある。

コロナ感染防止対策として政府が学校等の臨時休校を要請したことにともなって実施された施策だ。

 

この制度を利用して有給での特別休暇を会社に要請したところ、役所への申請手続きが複雑で面倒だからとの理由で断られたとの相談があった。

会社の担当者は、コロナ関連の雇用調整助成金の申請手続きだけで手一杯だ、役所が求める多数の書類を整えるのは大変な作業だ、子供の世話の特別休暇のために同様の作業をする余裕はないと説明したという。

 

任意の申請手続きにおいては、申請により利益を受ける者を申請権者とすることが合理的だ。

自分の利益のためならば多少の手間暇は厭わず申請手続きをすることが期待されるからである。

 

会社を休んで子供の世話をする親の賃金相当額を会社に対して助成する小学校休業等対応助成金において、直接利益を受ける者は子供の親である従業員である。

しかし、従業員自らが役所に申請する手段は用意されていない。

従業員にできることは、会社が役所へ申請することお願いすることだけである。

他方、制度上の申請権者である会社には、手続きの煩雑さのためもあり、申請に手間暇をかける誘因は少ない。

とりわけ役所相手の手続きに不慣れな中小事業者にとっては申請へのハードルは高い。

 

その結果、労働者が希望しても会社が申請しないため、有給の特別休暇が利用できない事態が多発している。

救済されるべき者に何らの手続き上の権利を与えていないこの制度には制度設計上のミスがあると言わざるを得ない。(直井)