マッサージサロンとの間で締結した業務委託契約に基づき働くマッサージ師から相談があった。
お客からサロン運営者である本部にクレームがあり、その調査のため3週間サロンで働くことを禁じられた。
調査の結果、問題となる行為は認められなかったことから、今は業務に復帰しているのだが、働けなかった3週間の休業補償がないとの相談だ。
報酬は売上げに見合った歩合制ではあるが、シフトに従って週4日勤務し、サロンで働く時間帯も決められている。
労働基準法の適用があれば、最低限6割の休業手当(同法26条)が補償されることになる。
取り交わした業務委託契約書には、労働基準法ほか労働関係法の適用を受けないことを明記した条項がある。
しかし、本件のような「業務委託契約書」を取り交わしていたとしても、そのこと自体から直ちに労働基準法上の労働者に当たらないと判断されるわけではない。
労働基準法上の「労働者」であるか、業務委託契約における独立した「個人事業主」であるかは、契約の形式いかんにかかわらず、実質的に判断される。
すなわち通常の契約の当事者間における対等な関係ではなく、実質的に契約の相手方に従属している関係(「使用従属性」)があれば労働基準法上の労働者であると判断されることになる。
「使用従属性」が認められる具体的な要素としては以下のものがある。
・仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がないこと、
・業務遂行上の指揮監督の程度が強いこと、
・勤務場所・勤務時間が拘束されていること、
・報酬の労務対償性があること、
・機械・器具が会社負担によって用意されていること、
・専属制があること、
相談者には以上のことを説明したうえで、労働基準法上の労働者に当たる可能性が高いので諦める必要はないことをアドバイスした。
労働者保護法の規制を免れるため労働者を個人事業主として業務委託契約で使用する使用者はあとをたたない。
多様な働き方(=多様な働かせ方)のほとんどは労働者のためのものではなく、使用者のためのものだ。
コロナ一斉休校がらみの休職者助成制度として、政府は、労働契約に基づく労働者(上限1日8,330円)とは別にフリーランス(個人事業主)向けの低額枠(定額1日4,100円)を用意するようだ。
政府の一斉休校要請に伴う休職者への補償を目的とする措置ならば、契約の形式で区別することにどの程度の合理性があるのか疑問だ。(直井)
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