辞めてくれないかといわれた、解雇されると履歴が汚れるので解雇は避けたい、解雇を言い渡されるくらいならば退職することを考えている、しかし、離職票には自己都合ではなく会社都合として記載して欲しいという相談があった。
解雇されたら履歴が汚れる。
転職への悪影響が心配だ。
転職の面談の際、前職の離職理由を解雇といいたくない。
以上のように考える労働者は少なくない。
使用者は、従業員のこのような不安を逆手にとって、退職に応じないならば、解雇すると脅し、執拗に退職願いへの署名・押印を求める。
しかし、使用者の狙いは、後で解雇の適法・違法が争われるリスクを避けることにある。
他方、何事も金銭換算したコスパ・損得で判断したがるネット情報の影響か、離職票の記載に会社都合を求める労働者は多い。
会社都合の離職が失業手当の給付において有利であるからだ。
転職など自己の都合により離職した場合は7日間の待機期間にプラスして給付制限期間(3か月)がある。
解雇など会社の都合により離職した場合は受給資格決定後7日間の待機期間が経過すれば給付を受けられる。
収入の道をたたれた退職者にとって3か月間も給付を待たされることのダメージが大きい。
解雇の不名誉は避けたい、他方、失業手当の関係では会社都合(解雇、退職勧奨など)としたいと考えているのが退職を迫られた多くの労働者の本音といえる。
そのため、ほっとユニオンは、解雇が争われた案件の和解において解雇撤回・円満退職で解決した場合、「会社都合による退職」という文言を合意書に入れることにしている。
しかしながら、そもそも、非行行為などを理由とする懲戒解雇でないかぎり、解雇を言い渡されることは労働者にとって必ずしも恥ずべきことではない。
納得できない解雇ならばなおさらである。
弱気にならず、納得できないならば、安易に退職願いへの署名・押印はしないで、まず、専門家に相談することを薦める。
安易に任意の退職に応じないことによって、同じ辞める結果になるとしても、使用者の譲歩を引き出し、より有利な退職条件を得ることが可能になる。
強いことを言っても、使用者の本音は訴訟リスクを回避するために解雇を避けることにある。
使用者にとっても正式に解雇を言い渡すことは怖いものなのです。(直井)
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