☆あっせんの前提となる「紛争状態」とは?☆

労働局にあっせん申請にいったら、「紛争状態」にあるか微妙であるといわれ、結局受け付つけてもらえなかった相談者がいた。

 

メンタルで病気休職中に上司からメールなどで度重なる退職勧奨がああった。

これに対し、相談者が今は職場復帰を考えていると退職勧奨を拒否し続けたら、今度は会社に出頭しての面談に応ずるように求められた。

会社の会議室で上司などに囲まれた中での面談に不安を感じた相談者は、自宅近くで一対一の面談ならば応ずる用意があると回答したが、無視された。

 

相談者は、会社の上司とのやりとりがこれ以上続くことには耐えられないと感じたことから、労働局に、退職勧奨問題の解決のためのあっせん申請の手続きに赴いた。

しかし、窓口の職員は、会社に対して何か具体的な要求をしてそれが拒否されたとの説明が不充分だとし、いまだ「紛争状態」にあるといえるか疑問があるとして受け付けてもらえなかった。

 

労働局のあっせん申請書には①労働者及び事業主の氏名及び住所を記載する「紛争当事者」欄、②「あっせんを求める事項及びその理由」欄と③「紛争の経過」欄、④「その他参考となる事項」欄がある。

相談者は②「紛争の経過」欄に断っても断っても度重なる退職勧奨が続いているという事実を記載した。

 

労働局の職員が求めていた記載内容は、「労働者が使用者に対して、退職勧奨を止めることを明確に求めたが要求は無視され退職勧奨が続いている」、「労働者が使用者に対して、退職勧奨が不法行為に当たるとして慰謝料の支払いを求めたが拒否された」など労働者が使用者に対して当該退職勧奨に関する具体的な要求を提示し、これに対し使用者が拒否した事実のようだ。

 

労働者にとって退職勧奨問題という労働トラブルが存在するのは疑いのない事実である。

このことは労働局の職員も理解したようだ。

 

しかし、労働局の職員の説明によれば、あっせん手続きは、労働者と使用者との間に「紛争」が発生していることが前提となる。

ここでいう「紛争」とは労働トラブル解決策にかかる当事者間の主張の不一致である。

いまだ「紛争状態」に至らない事実上の「労働トラブル」はあっせんの対象とはならないとのことである。

 

「紛争の経過」欄には紛争の原因となった事実(労働トラブル)と交渉の経緯(紛争状態)の記載が求められる。

相談者の準備したあっせん申請書には解決して欲しい労働トラブルについての記載は山ほどあったが、当該労働トラブルについて使用者との交渉の経緯の記載が欠けていた。

 

確かに、あっせんが当事者の自主的な話し合いのお手伝いをする手続きに過ぎないことは、労働局の職員の説明のとおりである。

しかし、労働者は、使用者と一人で対峙して交渉できる自信がないから行政に助けを求めたのである。

 

使用者との関係で弱い立場にある労働者に対して、まず交渉してそれが不調に終わってから出直せえとはいささか乱暴な対応と言わざるを得ない。

労働局には、労働者の立場にたった柔軟な対応を望みたい。(直井)