団体交渉において、小規模な会社の場合、弁護士ではなく社会保険労務士が使用者側に同席することがある。
20年以上にわたり建物解体作業に従事したイラン人労働者の不当解雇を巡る今回の団体交渉もそうであった。
解雇理由証明書の書き方について会社から相談を受けた社会保険労務士は解雇理由証明書の作成を請け負った。
団体交渉は、その解雇理由証明書に記載のある一つひとつの具体的な事実の確認作業から始まった。
同席の社労士は解雇は適法であるとの主張に終始し、「文句があるなら、裁判に訴えろ!」との捨て台詞を吐いた。
当然ながら団体交渉は不調に終わった。
団体交渉の場において弁護士や社労士が依頼主である使用者の立場に添った主張を展開するのは当然である。
しかし、労働トラブルを話し合いで解決するためには、それぞれの主張の違いを認識したうえで、そこから一歩進めて、事案にそった妥当な解決策を模索する姿勢が不可欠である。
場合によると、依頼者を説得しなければならない場面もでてくる。
話し合いでの解決のためにはそのような調整能力が求められる。
このことは組合側にとってもいえることだ。
相談者に寄り添う姿勢は大切であるが、解決のための具体的な方策を見つけ出すためには、当事者から一歩距離を置いて冷静に検討することも大切である。
矛盾するようであるが、当事者と完全に一体となってしまっては、話し合いでの解決は遠のいてしまう。
本件においては当事者となってしまった社労士は調整能力ゼロであった。
たとえある程度の譲歩をしたとしても、話し合いで労使トラブルを解決することは、依頼者である使用者にとっても利益となるはずある。
さらにいえば、裁判となった場合、社会保険労務士では対応できないため、弁護士が対応することになる。
くだんの社労士の「文句があるなら、裁判に訴えろ!」発言は、無責任な対応といわざるを得ない。
強い言葉を吐いて話し合いの席を立つことは簡単である。
しかし、和解での解決のためには、始めは双方の主張の隔たりがいかに大きくみえても、乗り越える方法を模索する努力が不可欠である。
ほっとユニオンは労働トラブル解決のための次の場である裁判所での解決を求めて労働審判申立ての準備を始めることとした。
ほっとユニオンは簡単には諦めません。(直井)
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