今年に入ってスポーツ界でパワハラ騒動が相次いで吹き出した。
女子柔道、アメリカンフットボール、女子体操などなど。
もっとも、今年になって急に選手に対するパワハラが増加したというわけではないだろう。。
そうではなくて、選手個人がコーチ、監督など組織の上層部の人に対して声を出しやすい環境が整ってきたということだろう。
個人からの労働相談を受けていると、これってパワハラですよねという質問を受けることが少なくない。
そもそも、彼ら彼女らのいうパワハラとは何なんだろうか。
パワハラという言葉は分かるようで分かりにくい。
職場のパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為をいうと一応定義されている。
今回の女子体操のパワハラ騒動の中で、本人がパワハラと感じればパワハラに当たるという論調もみられる。
被害感情の尊重は、男女平等・女性の尊厳の確保という価値観が世間的に認知されつつあるなかで、弱者である被害者(女性)保護の立場から被害感情を重視するセクハラの定義からの類推であろう。
閉鎖的な社会関係の中で指揮命令関係にある労働者、指導を受ける立場にあるスポーツ選手はある意味で似通っている。
職場におけるパワハラ問題の特徴は、上司によるパワハラ自体にあるのではなく、それを見て見ぬふりをする同僚の存在であると考える。
被害者が声を上げるとさらに職場において孤立を深めるということになる。
集団のいじめである。
最近のスポーツ界におけるパワハラ問題の顕在化のなかで目に付くのは、選手個人を援助する弁護士の役割である。
職場においても、同様に労働者個人を援助する仕組みがほしい。
しかし、一般の労働者個人にとって弁護士はいまだ敷居が高い。
労働局などの行政機関はフットワークが良くない。
この役割を職場内に組織を持つ労働組合に期待したいが、ほとんどの中小企業において労働組合が存在しないのが現状である。
ほっとユニオンなど企業外の組合にとっても、職場に足がかりが持たないこともあり、取り扱いにくい問題である。
パワハラ問題の根本的な解決のためには従業員がお互いに助け合う職場組織の再生が重要だと考える。(直井)
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