正社員としてシフト制で働いている相談者が体調不良で2週間ほど休んだ後、明日から出社すると会社に連絡したところ、解雇予告の言い渡しとともに言い渡し日から解雇日まで出社におよばずと命じられた。
事実上の即日解雇であるが、解雇言い渡し日から解雇日まで30日以上あることから解雇予告手当の支払い義務は発生しない。
相談者の不満は解雇そのものの不当性にあるのだが、それは別として、解雇言い渡し日から解雇日までの賃金は支払われるのであろうか?
会社は解雇言い渡し日から先にシフトの指定がないことを理由に賃金の支払を免れるつもりのようだ。
しかし、出社に及ばないとしてシフトを組まないのは会社の責任であり、シフトがないことを理由として賃金の支払いを免れることは許されない。
会社側の都合で労務の受領が拒まれているのだから、労働者は反対給付としての賃金を受ける権利は失われない(民法536条2項)。
正社員である限りシフト制であっても、月何日出勤するなど所定労働日数、所定労働時間の定めがあるはずである。
シフトが組まれていない場合でも、所定労働日数、所定労働時間に基づいて賃金請求権が発生することになる。
なお、本件では休業手当ての支払い義務も発生する。
休業手当ての支払いは、平均賃金の6割を罰則の強制をもって使用者に支払わせる労基法上の義務である。
しかし、たとえ、6割の休業手当てが支払われたとしても、労働者は民事上の請求権として通常勤務していれば支払われるべき賃金額に不足する額について請求権を失うものでにない。
すなわち、かりに休業手当てが支払われたとしても、通常の賃金額に不足する額についての請求をあきらめることはない。(直井)
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