☆シフト制と年次有給休暇☆

  シフト制で働く労働者が辞める1か月以上前に退職を申し出て、これまでとれずに貯まっていた年次有給休暇を一挙に消化しようとした。そのように申し出たら、その日以降、シフトの指定を外され有給休暇の消化ができないままに退職日に至ってしまった労働者からの相談があった。

 

 月毎に出勤日が指定されるシフト制で働く人は少なくない。シフトの決め方は、働く人と調整しながら会社が決めるものが多いが、会社が一方的に指定するものもある。

 

 シフト制で働く労働者であっても、当然に年次有給休暇は発生する。所定労働日数が週5日以上(または、所定労働時間が週30時間以上)ならば通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇がとれる。

 

 年次有給休暇は労働日の労働義務を免除し、かつ、有給とする仕組みである。シフト制の場合、まず、会社が労働日であるシフトの指定をしなければ、労働者は有給休暇をとる日の指定(有給休暇の請求)ができないことになる。すなわち、会社がシフトを指定しない場合、有給休暇として指定すべき労働日が確定しないのである。

 

  退職を前提にした労働者には納得しがたい理屈である。

  労働者が取り得る対抗手段としては次の2つが考えられる。

 

 ①労働契約で週4日勤務など所定労働日数が定められているにもかかわらず、会社がシフトを指定しない行為は労働契約に違反する違法な行為である。したがって、違法なシフトの不指定により失った給与相当額を損害として賠償を求める。交渉で埒があかなければ労働審判など司法的な手続をとることになる。

 

 ②シフトを指定しない行為は、休業を命じる行為とも解されることから、労働基準法26条の休業手当(賃金の6割)を請求する。会社が支払いに応じない場合、労働基準法違反として労基署に相談・申告することになる。(直井)