正社員の65才までの雇用継続を定める高齢者雇用安定法の下、60才定年制を維持したままで定年退職後は更新期限を65才までとする有期雇用を採用する企業は少なくない。
有期雇用社員の更新の上限も正社員の定年退職者の雇用保障と同じく65才までと定めるものもある。
そこに①有期雇用の無期転換ルール(5年ルール)を定める労働契約法18条(2015年4月施行)及び②無期転換ルールの特例として、定年退職後に有期雇用契約で継続雇用される高齢者は無期転換ルールの適用を受けないと定める有期雇用特別措置法(2019年4月施行)が加わることにより高齢の有期雇用社員の位置は複雑になった。
60才以上に至った有期雇用社員の無期転換権を制限するために60才までに無期転換した者だけを60才の時点で有期雇用社員として継続雇用し65才までの更新を認めるという事例が発生する。
以下に紹介する最近の相談事例はまさに上記の事例であった。
この企業では従前は契約社員も希望すれば65才まで更新が認められていた。
5年で無期転換権が発生するという労働契約法18条の新設を受けて変更された新しい制度は以下のとおりである。
① 期転換をしないまま60才を迎えた契約社員は雇い止めする。
② 期転換した契約社員については60才時点で正社員の定年退職者と同様に有期雇用に戻し、有期雇用社員として65才までの雇用を保障する。
一見すると特に契約社員に不利益は発生しない。
60才までに無期転換するかしないかは本人の自由な意思の結果だからである。
相談者は50代後半に入社したことから60才前に無期転換の要件である5年の勤務は満たさない。
無期転換することができないことから有期雇用社員のまま60才を迎えることになる。
60才で雇い止めとなる。
就業規則改正前は65才まで有期雇用社員として継続勤務の可能性があったのにその期待は失われた。
どうにかならないかとの相談であった。
簡単に言えば、従前事実上保障されていた65才までの有期雇用の更新への期待が、有期雇用社員の保護のため無期転換権を認めた法制度の新設によって奪われてしまうという皮肉な結果を生じたということである。(直井)
コメントをお書きください