労働者からの電話相談を受けて気づくことだが、相談者はすでに当該トラブルについて驚くほどの多くの「法的な情報」を有している。
その大半はネットからの情報だ。
本人が直接ネットで調べたものもあるが、ネットにそう書いてあると聞いたことがあるという程度のものも少なくない。
人は無意識のうちに自分の主張に沿う材料ばかりを集める傾向にあるといわれる。
そして、ソーシャルメディアは自分の考えを補強する材料ばかりを集めるのに格好な「装置」である。
アメリカのトランプ大統領誕生以来、とかく話題になることの多いポスト・トゥルース(事実か否かよりも自分に好ましいことを真実という考え方)という言葉も同様の現象を示した言葉といえる。
電話相談において、職場における自分に対する取り扱いは不当であり、使用者・上司の行為が違法であることの確認を求める相談者が多い。
ネットで収集した自己に有利な情報の確認のためと思われる。
これに対して、いくつかの前提事実を確認した上で、消極的な意見を述べると、あなたは私が間違っているというのかと、怒り出す相談者もいる。
このような対応をとる相談者は、都合のいい回答を求めてあちこちの無料電話相談を回っている。
ネットにあふれている情報の多くは、読者に受け入れやすいように盛られているものが少なくない。
ネットは便利な道具だけれど、利用には注意が必要だ。
なによりも情報源を確認することが大切である。
作成者が匿名の情報は眉に唾をつけて聴く慎重さが求められる。
多数の意見が必ずしも真実であるというわけではない。
とりわけネット上においては。(直井)
コメントをお書きください