3月15日、コンビニ店主が求めるフランチャイズ(FC)本部と団体交渉する権利は認められないとの判断を示した中央労働委員会の命令が出された。
コンビニ店主が労働組合法上の労働者に当たらないとの判断が示された。
これを不服とする店主側は中労委命令の取消訴訟を提起するとのことなので、法的な意味での決着は裁判所に持ち越されることになる。
新聞報道(3月16日付「朝日新聞」)によると、ファミマは「今後も加盟者(コンビニ店主)一人一人とのコミュニケーションを大切にしていく」とのコメントを出した。
経済的強者であるコンビニ本部の本音が透けて見えるコメントである。
一人一人とのコミュニケーションは大切にするが、団体交渉など集団とのコミュニケーションは大切にしないということのようだ。
交渉相手をバラバラに一人一人にしておけば、いままでどおり、経済的強者である本部は自己に有利な条件を店主側に押しつけることが可能となる。
労働組合法は一人一人では無力な労働者が経済的強者であある使用者と集団として対峙できる仕組みを作ることで労働者の福祉を実現することを目指した法律である。
純法的観点からは、本件はコンビニ店主が労組法上の労働者に当たるか否かについての労働組合法の解釈を巡る争いである。
しかし、社会的に集団的な枠組みが求められる関係は厳として存在する。
今、集団的な枠組みの再認識が求められている。(直井)
6か月の有期雇用の期間満了による契約終了を言い渡されたIT技術者から相談をうけた。
相談者は正社員としての雇用を希望して採用に応募した。
始めは試用期間として6か月間の有期雇用契約を締結するということになり、雇用期間6か月の契約書を取り交わした。
採用時に取り交わした契約書は単に雇用期間6か月間と記載のあるもので、試用期間としてのものであるとの記載はなかった。
その後、試用期間は1度6か月間延長されたが、延長後の契約期間満了前に突然契約期間満了による契約終了を言い渡された。
試用期間として有期契約を利用する例は少なくない。
使用者は通常の試用期間とは違って、有期契約としての試用期間ならば期間満了を理由として解雇(雇い止め)が容易であると考えているのであろう。
しかし、使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解される(神戸弘陵学園事件最高裁判決)。
試用期間か否かは、契約の形式ではなく実態で判断するのが裁判所の立場であり、有期雇用が試用期間であると判断される場合は、単に期間満了を理由とする解雇は許されない。
本採用を拒否する合理的な理由が必要である。
本件においては、あくまで本採用拒否(正社員にしないこと)の理由を明らかにするように会社に求めるようにアドバイスをした。(直井)
パワハラ防止策に取り組むことを企業に義務づける法改正案が閣議決定(3月8日)された。
新聞記事によれば、法改正案では、パワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義し、防止策を企業に義務づけている。
具体的な防止策は、法改正後につくる指針で定める。
加害者の懲戒規定の策定、相談窓口の設置、社内調査体制の整備、当事者のプライバシーの保護などが想定される。
正直に言えば、会社外の労働組合であるユニオンにとって、パワハラ相談は対応に困る相談のひとつであった。
パワハラは、セクハラと異なり、法律上の定義規定がなく、具体的な防止措置を講ずることが企業に義務付けられていないことが大きな壁であった。
一般論としては、裁判に訴えて、行為者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求すること、使用者に対して安全配慮義務違反理由として損害賠償を請求することは可能であるが、証拠・立証という面でハードルが高かった。
労働局へ改善のための指導・助言を求めても、使用者が協力的ではない限り、具体的な成果は期待できなかった。
企業にパワハラ防止措置を講ずることを義務づける法律の制定はパワハラ撲滅への大きな一歩となることが期待される。
ユニオンにとっても、新たな法規定を手がかり足がかりとして、パワハラ問題について使用者と交渉することがより容易になる。
早期の法改正を期待したい。(直井)
6か月の期間で働く契約社員から相談があった。
ネット情報などによると、退職するには2週間前にその旨を会社に伝えればよいと聞いているが、そのとおりか。
上司のパワハラ的言動もあることから、転職活動中でよい条件の転職先が見つかり次第、期間満了を待たずに退職したいとのことであった。
2週間云々は、民法627条に基づくものであり、期間の定めのない雇用契約である正社員に適用がある規定だ。
残念ながら雇用期間の定めのある契約社員には適用がない。
有期雇用契約に基づく契約社員に適用のある民法628条は、期間途中の解約の申出には「やむを得ない事由」を要求している。
労働条件が初めの約束とは違うとか、長時間労働で体調を壊しそうだとかの事情がこれにあたる。
より条件のよい会社を見つけたので転職したいとの理由は、「やむを得ない事由」には当たらないが、上司のパワハラはこれにあたると考えられる。
しかし、いずれにしても労働者は使用者の奴隷ではないのだから、働くことを強制されことはない。
仮に、「やむを得ない事由」が認められなくても、突然辞めることによる損害賠償を請求されるリスクを負うだけである。
そのリスクも、取り替え可能な労働に従事しているアルバイト的な働き方を強いられている契約社員には無用な心配であるといえる。
なお、辞める者の代替を募集することに伴う費用は、使用者が通常負担するものであり、辞めた者に請求できる損害には当たらないと解されている(直井)
スポーツジムのインストラクターから退職手続きについて相談を受けていた。
私は残っている年次有給休暇を消化したうえで退職するという手順を提案した。
相談者がその旨を社長に申し出たら、怒った社長は即時解雇を言い渡した。
明らかな違法・不当な解雇である。
ユニオンに加入した上での団体交渉申入れ、労基署への相談、労働審判の申立てなどいくつかの選択肢を提案した。
持ち帰って家族とも相談して決めるということになった。
1週間後、相談者から検討結果の報告メールがあった。
もともと辞めるつもりであったこと、将来について具体的な計画があること、闘うことで後ろ向きにエネルギーを使いたくないことなどを総合勘案した上で、あえて闘わないということに決めたとの報告であった。
メールは次の言葉で終わっていた。
「今回の件でたくさんのことを学べ良い経験ができたと思っております。今後の生活に活かし新たなステージに向かって行きたいと思っています。」
このように、泣き寝入りするのではなく、あえて闘わないのも立派な選択肢です。
ほっとユニオンはあえて闘わない労働者も応援します。(直井)