相談者から依頼され、労働組合ほっとユニオン委員長としてではなく、社会保険労務士として会社面談へ同行した。
所定労働時間前の作業に取り掛かるための準備時間や作業終了後の確認のための待ち時間の取り扱いをめぐり紛議が生じていた。
面談は、会社の見解を問い質し、賃金支払いの対象となる勤務時間としての取り扱いを求めるための面談であった。
面談の場ではじめて知ったことだが、相談者は面談内容を録音することをあらかじめ、会社に伝えていた。
面談の冒頭で会社側は相談者の録音を了承するとともに、会社側でも面談内容を録音することを表明した。
正直言って、しっまったと思った。
録音について事前に相談を受けていれば、反対した。
確かに、会社面談の内容を録音することは広くネットなどでのお薦めになっている。
しかし、有効なのは、会社側に知らせない状態での証拠収集のための録音である。
また、退職強要などが想定される場合の防衛策としての録音である。
しかし、交渉と録音はミスマッチである。
録音されていることを前提として交渉はできない。
交渉とは双方が譲り合って合意に達する手続きである。
録音されていることが前提となっていては、建前の主張が繰り返されるだけである。
私の抱いた危惧は現実となった。
何ら実際的な進展がないまま、双方がそれぞれの主張を言い合うことに終始して面談は終了した。
ほっとユニオンは団体交渉を録音することはしません。
双方の譲歩による解決を模索するのが団体交渉だと考えているからです。(直井)
ユニオンと労働組合は違うのですかと尋ねられることがある。
呼び方は違うが、団体交渉権を有するなど労働組合法の取り扱いは同じです。
ほっとユニオンは労働組合法上の労働組合です。
相談者が使用者との労働トラブルをほっとユニオンによる団体交渉で解決するという方法を選択した場合、ほっとユニオンが最初にすることは、団体交渉申入書を使用者に特定記録郵便で送付することです。
具体的な交渉日時、交渉場所は使用者の都合も考慮しながら決めます。
まれにですが、団体交渉の申入れに応じようとしない使用者もあります。
このような場合は、ほっとユニオンは、労働組合法上の権利行使として東京都労働委員会に団体交渉の応諾を求めて不当労働行為救済申立てをします。
ほっとユニオンは、東京都労働委員会で労働組合法に適合する労働組合であるとの決定を得た上で、法人登記をしています。(直井)
固定残業代の違法運用が後を絶たない。
固定残業代とは、あらかじめ毎月の残業代(ないし残業時間)を決めておき、実際にはそこまで残業しなくても事前に決めた固定の残業代が支払らわれる仕組みである。
労働時間管理および残業代計算事務の省力化のためと説明されることもある。
居酒屋に勤めているという相談者が来た。
連日の長時間労働のためメンタル不調となり辞めたいと申し出たが、引き留められて困っているという相談であった。
話しをよく聴くと、毎日午前12時のミーティングから始まり、帰宅するのは翌日午前2時ころとの過酷な長時間労働である。休日も毎週1日のみである。
持参した給与明細をみると、基本給等19万6千円と固定残業手当4万円の記載がある。
使用者は固定残業代だけ払えば、何時間残業させてもいいと考えているようだ。
月4万円(相談事例では約28時間相当)では労基法37条等に則って計算された実際の残業時間(相談事例では約150時)に見合った残業代に遙かに及ばない。
固定残業代の適法要件については、議論がある。
事前の固定残業代(金額)の明示だけでなく、それに対応する時間の明示も必要だ、かつ、それを超えて働いた超過部分は清算するという合意ないし清算しているという実態がなければならないという最高裁判決の補足意見がある。
固定残業代の金額の明示のみで足り時間の明示まで必要でない、超過部分は清算するという事前の合意または支払っているという実態まで必要ない、との見解もある。
しかし、固定残業代を超えた超過残業部分の支払い義務が使用者にあることには争いがない。
超過残業代の清算払いをしないという運用は明確に違法である。
相談者には、断固、超過残業代を取り立てるようにアドバイスをした。(直井)
先輩のいじめによりメンタルを病み会社退職に追い込まれた相談者がいた。傷病手当金の申請手続きなどについて1年程前に相談を受け、会社と交渉のうえ解決に至った組合員から次のようなメールが来た。
「まもなく1年が経とうとしています。転職後の会社で何事も問題なく業務が行えておりますので組合の退会を希望しているのですが、何か手続き等はありますか?」
ほっとユニオンは加入時に12か月分の月例組合費(1000円×12か月=1万2千円)を一括して納めてもらっている。
会社との労働トラブルは2、3か月程度で解決に至ることが多いが、特に組合脱退の意思を示さない限り解決後も組合員の身分は持ち続けていることになる。
先の質問に対して以下のとおり回答した。
「組合加入後1年経過後の退会の手続きについいのお尋ねですが、退会の手続きはとくにありません。組合加入してから1年経過後改めて更新の手続き(組合費の納入)をとらなければ、自動的に退会扱いとなります。」
ほっとユニオンはゆるいほっとな組合です。(直井)