不当解雇・パワハラ・セクハラなど労働トラブルを抱えた労働者が、自らの手に余ったとき、解決手段としてユニオンを選択するとき何を基準にして選ぶのだろうか。
労基署など行政機関への相談、裁判所への訴えの提起ではなく、どのような理由でユニオンによる交渉を選ぶのだろうか。
行政機関への相談は無料でお手軽だが、相談に終始し具体的な解決まで結びつかないことが多い。
行政機関は本人に代って使用者と交渉してくれるわけではない。
裁判を本人ひとりで行うのは大変である。
弁護士に依頼するには必ずしも低額とはいえない費用がかかる。
ユニオンならば、交渉もしてくれるし、安上がりだ。
ユニオンのコストパフォーマンスが一番だ。
ということらしい。
コスパ基準からのユニオン選択は一応正しいといえる。
しかし、ユニオン側にいる人間としては注意を促したいことがある。
①ユニオンは無料ではないこと。
ユニオンの運営には経費がかかり、その経費を賄うために組合費を徴収している。
相談者は組合費を支払って組合員となる必要がある。
ほっとユニオンでは月額1000円の通常組合費を徴収しいている。
また、紛争解決時に組合員が負担する特別組合費(解決金の2割相当額)の規定もある。
②ユニオンは弁護士のようにお任せの機関ではないこと。
ユニオンは組合員を助けて一緒になって使用者と交渉をするが、すべてユニオンにお任せというわけにはいかない。
ほっとユニオンでは、原則として、交渉には組合員に同席してもらう。
また、団交が不調に終わった場合、必要に応じて、労働審判への申立てなど裁判手続きの援助も行っているが、弁護士のように代理人になれるわけではない。
③一定の成果を約束するものではないこと。
ユニオンは不満に思っていることを使用者に直接言う交渉の場を設定することは約束します。
しかし、交渉で何かを勝ち取れるということまで約束するものではありません。
自分自身で上手に交渉できる自信のある「強い労働者」はユニオンを利用するメリットはありません。
ユニオンは弱者のための共助の組織です。
以上のとおり、ユニオンに加入して交渉することが必ずコストパフォーマンスが一番だというわけではありません。
でも、泣き寝入りはしたくない、使用者に自分の受けた不当な取り扱いについて直接異議を申し立てたいというひとにはお役にたてます。(直井)
世の中変なことがある。
次のような相談を受けた。
勤めていた都内の美容院を3年以上前に辞めたにも関わらず、オーナーが相談者が勤め続けているように装い、税務署等に報告していたというのだ。
本人はそのこととに気づかず2年以上経過した後、たまたま友人との雑談のなかで無職の自分の国民健康保険料が定職についている友人より高いのに気づいた。
区役所に問い合わせたところ、区役所に提出されたオーナーからの給与支払報告書では、相談者は雇用され続けていたことになっているとの驚きの回答があった。
オーナーは人件費などの経費を水増しして所得税の申告していたと思われる。
相談者は払い過ぎた国保料(及び住民税)の返還を区役所に求めたが、この間働いていなかったことの証明がなければ、対応できないとの回答であった。
税務署にも相談したが、埒があかなかった。
相談者はオーナーのセクハラ・パワハラのため逃げるように美容院を辞めた経緯からオーナーとの接触をおそれていた。
辞めたこと及びこの間働いていなかったことの証明は意外と難しく困り果てた。
相談を受けた「ほっとユニオン」がオーナーに事案解明と問題解決のための団体交渉を申し入れたところ、意外なほどあっさりとオーナーは事実関係を認め、解決に向けて動き出した。
マイナンバー制度の施行により給与支払報告書や源泉徴収票などに従業員のマイナンバーを記載する必要が生じたことから、相談者のマイナンバーを知りようもないオーナーは対応に困っていたようだ。
一般には不人気なマイナンバーの意外な効用といえる。 (直井)