労働者からの電話相談を受けて気づくことだが、相談者はすでに当該トラブルについて驚くほどの多くの「法的な情報」を有している。
その大半はネットからの情報だ。
本人が直接ネットで調べたものもあるが、ネットにそう書いてあると聞いたことがあるという程度のものも少なくない。
人は無意識のうちに自分の主張に沿う材料ばかりを集める傾向にあるといわれる。
そして、ソーシャルメディアは自分の考えを補強する材料ばかりを集めるのに格好な「装置」である。
アメリカのトランプ大統領誕生以来、とかく話題になることの多いポスト・トゥルース(事実か否かよりも自分に好ましいことを真実という考え方)という言葉も同様の現象を示した言葉といえる。
電話相談において、職場における自分に対する取り扱いは不当であり、使用者・上司の行為が違法であることの確認を求める相談者が多い。
ネットで収集した自己に有利な情報の確認のためと思われる。
これに対して、いくつかの前提事実を確認した上で、消極的な意見を述べると、あなたは私が間違っているというのかと、怒り出す相談者もいる。
このような対応をとる相談者は、都合のいい回答を求めてあちこちの無料電話相談を回っている。
ネットにあふれている情報の多くは、読者に受け入れやすいように盛られているものが少なくない。
ネットは便利な道具だけれど、利用には注意が必要だ。
なによりも情報源を確認することが大切である。
作成者が匿名の情報は眉に唾をつけて聴く慎重さが求められる。
多数の意見が必ずしも真実であるというわけではない。
とりわけネット上においては。(直井)
ほっとユニオンでは、自主交渉による解決を原則としています。
実際にも相談案件の大半は団体交渉により解決しています。
しかし、団体交渉は話し合いによる解決ですから、お互いに譲歩する姿勢がなければ解決に至らないことになります。
どうしても譲歩の姿勢を見せない頑な使用者に対しては、団体交渉を適当なところで打ち切って労働審判の手続きを利用しています。
労働審判は労働トラブル解決のために地方裁判所で行う簡易な紛争解決手続きです。
労働審判委員会(裁判官を含む3名で構成)の審判(どちらが正しいかの判断を示す)を求める手続きですが、大半の案件は裁判官が主導する調停(話し合い)で解決しています。
ちなみに、ほっとユニオンが労働審判に持ち込んだ案件はすべて調停(ないし和解)によって解決しています。
でも、労働審判には問題点もあります。
労働組合(ないし組合役員)が申立人にも代理人にもなれないことです。
申立人は労働者個人しか認められません。
また、弁護士以外を代理人として認める許可代理という制度もあるにはありますが、実際に組合役員が代理人として認められた例を知りません。
ほっとユニオでは組合員に提供するサービスとして申立書の作成を行います。
申立書の提出や審判期日に裁判所へ出頭するときには、社会保険労務士である執行委員が付き添います。
審判の場には労働者個人のみで出ざるを得ませんが、通常の訴訟とは異なり、労使交互に別々に話を聴き、裁判官は時間をかけて丁寧に話を聞いてくれますから、心配は無用です。
ほっとユニオンの組合員になって労働審判を身近な制度として活用してみませんか。(直井)
相談者から解決金の相場について聞かれることが多い。
幅はあるが、失った賃金(ないし失う賃金)を損害として計算のうえ賃金○か月分程度と答えることにしている。
解雇案件は、解雇の違法性の強弱や相談者の年齢・勤続年数など個別の要素を考慮する。
答えが難しいのはセクハラ案件だ。
裁判におけるセクハラ行為に対する慰謝料の相場は、その行為の継続性や悪質性、性行為の有無、精神疾患の発症や、休職・退職したか等さまざまな事情が考慮される。
裁判外に和解においても、裁判における考慮要素が一般的な基準となるが、被害者の被害感情及び加害者の支払い能力も額の決定に大きく作用する。
加害者が経営者であり支払い能力がある場合など被害者の求める請求額は高額となる傾向がある。
被害女性にしてみれば、加害者が困るような額でないと溜飲が下がらないということのようだ。
そのような場合、被害者の納得をどのように得るかが和解の成否のカギとなる。(直井)