障害者雇用枠で入社した労働者から相談を受けた。
面談をした感じでは健常者と何ら変わるところは感じられなかったが、発達障害とのことである。
相談者の話しでは、採用時の面接で自らの障害との関係で丁寧なOJTを人事担当者に依頼した。
しかし、配置された職場は全体的に忙しいため、指導役の社員を含め皆各自の業務に手一杯で、判らないことを教えてもらおうにも、頼みにくい状態である。
相談者はこれを平成28年施行の改正障害者雇用促進法の定める合理的配慮義務違反として法的に争いたいとの意向であった。
障害者雇用を使用者の善意に頼るのではなく、働くことを権利として障害者に保障する法の建前を正面から実現しようという意気込みである。
確かに、障害者雇用促進法は、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮義務)を使用者が負うと規定している。
しかし、「使用者の過度な負担とならない限り」との但し書き付きである。
合理的配慮を法的な権利として裁判手続きで実現するには、使用者の「過度の負担」とならないという高いハードルがある。
さらに、本件相談の解決の難しさは、身体障害や知的障害と異なり、一見する限りでは健常者と異なるところが認められない発達障害(精神障害)ゆえの問題もある。
特別扱いすることに対する、職場の先輩・同僚の理解の得にくさがあるからである。(直井)