☆退職勧奨を拒否したら、試用期間の延長!☆

薬剤師資格を条件としたうえで未経験OKの医療関連会社の求人に応募し、中途採用された。

3か月の試用期間満了前に、会社は、あなたを即戦力として雇ったにもかかわらず、3か月間の試用期間中の訓練によっても期待した独り立ちできる水準に達していないとして、退職勧奨をしてきた。

 

退職勧奨を拒否すると一方的に試用期間延長を言い渡され、週に1回、指導を名目とした上司との面談が組まれることになった。

この面談が苦痛でいっそのこと辞めてしまいたいとの相談があった。

 

そもそも、試用期間の延長は、就業規則などで延長の可能性およびその事由、期間などが明定されていないかぎり、試用労働者の利益のために原則として認められない。

解約権留保付き労働契約と解される通常の試用関係においては、解約権が行使されないまま試用期間が経過すれば、労働関係は留保解約権なしの通常の労働関係に移行するのが原則であるからである。

 

ただし、本採用を拒否できる客観的な事由がある場合にそれを猶予する延長は、試用労働者の利益になることから、認められうる(雅叙園観光事件・東京地判昭60年11月20日)。

したがって、本件で問題とされるべきは、当初の3か月間の試用期間満了時点で本作用を拒否できる状態、すなわち、留保された解約権の行使が許される場合であったか否かである。

 

留保解約権の行使は、通常の解雇権の行使と同様に、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される。

 

具体的には、「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくことが適当でないと判断することが上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」(三菱樹脂事件・最大判昭48年12月12日)である。

 

本件は中途採用であるところ、会社の提示した採用条件は、一定の資格(薬剤師資格、TOEIC800点以上)の保持のみであり、経験の有無は問わないというものであった。

その意味では新規採用と似た側面がある。

したがって、会社のいう即戦力とならないという理由は、それだけでは、留保された解約権の行使として許される範囲とは言い難い。

 

さらに試用期間の延長が退職勧奨とセットで提示されたことは、会社が留保された解約権を行使した場合に解雇事案として法的に争われるリスクを回避する目的で、労働者の自主的な退職をうながすための手段として試用期間の延長が持ち出されたことが窺われる。(直井)

 

 

 

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☆解雇と合意解約の間☆

以下のような相談があった。

小さな街の不動産屋に1年近く働いたが、社長のやり方になじめないことから、退職を申し出た。

その場で、社長から「明日から来なくていい」「今日中にロッカーなどにある私物を持ち帰るように」と言われ、何も言い返せないまま、机やロッカーなどにある私物を持ち帰り退社したことである。

 

相談者は会社の都合も考慮したうえで、退職日を話し合いで決め、円満退職することを考えていた。

不当な解雇に当たるのでないか、すくなくとも給与30日分の解雇予告手当は請求したいと相談者は憤っている。

 

解雇か合意解約かの判断には微妙なところがある。

「明日から来なくていい。」など解雇を窺わせることを言われたら、「解雇ですか?」と会社の意思を確認することが大事である。

同じ辞めるにしても、解雇予告手当の有無が異なるし、解雇か合意解約かでは失業保険給付の取り扱いも異なる。

 

解雇であるとの回答があったとき、解雇理由に納得がいかないのならば、労働基準法が規定する解雇理由証明書を求めることも選択肢である。

 

「明日から来なくいい」「今日中に私物を整理して持ち帰るように」との突然の社長の暴言に頭が真っ白になり、黙って私物を整理して退社した後、しばらくして冷静になってから、不満が募り相談にくる人が後を絶たない。(直井)

 

 

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☆LINEでの解雇通知☆

不当解雇されたとの相談があった。

話しを聞くと、解雇にいたるまでは、LINE(ライン)上で使用者とやり取りが数多く確認できるのに、なぜか相談者がいうところの不当解雇の言い渡しなるものがいまひとつ不明確なのである。

 

現在、LINEは、電話にかわって、若者たちの基本的な連絡ツールになっている。

従業員が数名という小規模企業においては、私的な連絡だけではなく、業務上の連絡をLINEで行う職場も珍しくない。

従業員は急な休暇の届け出など使用者への連絡にLINEを日常的に利用している。

電話よりも気軽に使え、記録も残り便利だからであろう。

 

しかし、使用者は解雇の言い渡し場面ではラインの使用には慎重である。

本件においては、体調を崩し休んでいた相談者が使用者と休暇の取得を巡ってラインでやり取りをしているとき、突然、使用者が電話で話したいといってきた。

折り返しの使用者からの電話は、退職の勧奨という形式をとった解雇の言い渡しであった。

 

このように日頃の連絡をラインでしながら、解雇の言い渡しは電話でする使用者がいる。

解雇ではなく、合意退職という形式を望むからである。

「このままだと続けて働いてもらうことは難しそうだ。」「あなたはこの職場には合わないようだ。」とかの遠回しな言い方で、従業員から「では、辞めます。」という言葉を引きだそうとする。

短い字数で端的に要件を伝えるラインには不向きな会話である。

 

相談者は、解雇されたのか、合意退職したのか、自分でも不明確な状態で相談にきた。

基本的な事実関係があいまいだと相談を受ける側にとってもアドバイスが難しい。

 

使用者からこのような電話をもらったとき、「解雇の言い渡しならばLINE(または書面)でお願いします。退職の勧奨ならばお断りします。」と勇気をもってきっぱりいうことを勧めます。

あいまいなまま追い込まれた退職が一番不満が残ります。(直井)

 

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☆辞めてやると啖呵をきる前に☆

次のような相談があった。

相談者は、アルバイトを含めて従業員2、3名の零細企業におけるたった一人の正社員であるである。

零細企業ではよくみられることだが、採用に際して契約書(または雇用条件通知)の交付もない。

 

社長から経営が苦しいので来月から賃金を切り下げるといわれた。

それに対し、相談者が、減額された賃金では生活ができない、賃金を切り下げるなら辞めるほかないと言ったら、社長から、では辞めて下さいといわれ、そのままずるずると退職扱いになってしまった。

 

社長からは時を置かず会社のカギの返還や健康保険証などの返還を求められた。

しかし、退職願いの提出を求められたわけでもない。

不当解雇だと、解雇理由証明書を求めたら、解雇ではない合意解約だと言われた。

 

よくあるパターンである。

合意退職か解雇かが争われる場合、最終的には裁判で決着をつける以外方法はない。

 

不当解雇だとして労働者が裁判で争う場合、解雇されたことは、労働者側が証拠を示して立証する必要がある。

本件のように手続きがすべて口頭でなされため、解雇通知書など客観的な証拠がない場合、社長との発言のやり取りなど面倒な立証の必要が生じる。

 

会社から賃金の切り下げを迫られた場合、そんなら辞めてやると啖呵を切るまえに一呼吸おいて冷静に考えてみることが大切だ。

一方的な賃金の切り下げには同意しないこと、退職する意思のないこと、をはっきりと社長にいうことが大切である。

後で不当解雇として争うことを考えているならば、書面はなくとも、賃金切り下げに応じないならば解雇するとの社長の発言は明確にしておくことが必要である。(直井)

 

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